以下の文章は昔の時間湯について書かれたものです。
現在とは異なる部分もありますが、記録のためなるべくそのままの形で掲載しています。

時間湯の安全管理について

 確かな「湯長の指導力]が、長い歴史の検証に耐えてきた時間湯安全管理体制と最善の効率的湯治技術であること、そしてこの2点が時間湯の伝統の核心であること、湯長になる為にはこの時間湯の伝統を正しく引き継ぐ必要であることを理解して頂ければと思います。 

 1.安全に対する配慮
 湯長の指導力の一つは、安全に対する配慮です。湯長は、新規入湯者や体調不良者、高齢者に限らず入湯者全員に声をかけます。そして、入湯前の顔色・睡眠時間・食事の有無などの健康状態、かけ湯の仕方、入る場所、湯の入り方、入る時間、湯の中での注意、湯からの出方、出た直後の注意、更衣室での休み方、足湯の仕方、蒸しタオルの仕方、1日の風呂の回数とその時間など、全ての細部にわたって指示されます。しかも、各人の症状と体調、精神状態を相談してなされます。さらには天候や気温についても言及されます。
 2.確かな知識
 2つ目は、湯治の関する確かな知識です。解毒療法に関してだけでも、出し方、範囲の絞り方、止まったときの出し方、期間、あげ方、あげる期間、かゆみの止め方、痛みの止め方のそれぞれについて、各人の状態に応じて複数のテクニックがあります。
 さらに多種多用な病気に関する知識とそれに応じた湯治法、様々な薬に関する知識、体質改善のメカニズムの一般的な説明など、湯長には豊富な知識があります。
 3.入湯者同士の指導の禁止
 3つ目は入湯者同士の指導の禁止です。長期間湯治をしていると、先輩は後輩に色々のアドバイスをしたくなるものです。しかし、例えば同じアトピーにしても薬の経歴や発病の時期、各人の体質などによって千差万別です。、自分の個人的な経験に基づいたアドバイスが他人にも当てはまるとは限りません。時には危険です。禁止されるまでもなく、入湯者同士のアドバイスは入湯者自身が慎むべきです。そして、指導は、知識と実績の豊富な湯長に委ねるべきです。
 4.規則と罰則、処分の存在  
 4つ目は規則と罰則、処分の存在です、時間湯での湯治は半ば集団での共同生活です、必然的の湯治も湯治以前の共同体としての最低限のマナー、ルールがついてまわります。、その最低限のマナーを「私は病気を治しに来ているのだから、湯治以外のことで気を使いたくない」といって、無視する訳にはいきません、こうしたルールの上で、はじめて良い環境が生まれ、皆が安心して湯治に専念できるのです。


 
一回の入湯における諸注意(概略)
湯づくり 入湯者の年齢、症状、天候、外気温により、湯の流出量の調節、パイプの方向の調整(お湯の流れ方、枕木の温度、温度帯)、湯の濃度の調整(上段下段、足下と胸の上下、作らずの湯、その他)
入湯前 神棚への参拝(心身清らかにし、お湯の薬効を高める。心理効果)、挨拶と入湯者への声かけ(入湯者の症状・体力・精神状態の判断)、入湯者各人への指導・指示、その他
湯もみ 目的:温度調整、成分の均一化、ガス濃度の調整、入湯者の体力状況の判断、その他
仕方:板をそろえる(波をぶつけない)、外気温、入湯者の体力、病状、人数、温度による調整、板の配置・深浅、朝夕の時間帯による調整、その他
かけ湯 頭にかける(頭部で体に温度を覚えさせて高温浴への準備)、タオルをかぶる(強酸のお湯が目、耳や口の中に入らない様にする為)、体にかけない(入浴中にお湯の染み込み強化する為)、足、指だけにかける場合、ぬめりを取る場合・取らない場合、脇にかける場合、股間へのかけ湯の仕方、その他
入湯時 ゆっくり入る(成分の肌への付着)、年齢・体力・症状により、分割入浴、半身浴、あて入浴、その他
入湯中 号令の意識(腹から声を出すことで、温泉ガスを含む蒸気を吸わせる、返事の有無・強弱による入湯者の状況の判断)、表情、息づかい・波紋による入湯者の状態の判断、股・脇を開く場合・閉じる場合、頭・首・背骨と枕木の関係、その他
出湯時 波を立てない。ゆっくり上がる、直後は低い姿勢で充分休む(立ち上がると、急激な血流変化が起こる)、その他
蒸タオル 体力・症状により、あて方、部位、時間、絞り具合、その他
休憩中 すぐに拭かない、汗を出し切る、体を冷やさない、水分補給、その他
足 湯 体力・病状により、ひざ裏をお湯につける場合、つけない場合、足首だけの場合、蒸しタオルの併用、時間、事前のマッサージの有無、その他
回 数 年齢、体力、睡眠状態、食欲、肌の状態、仕事の有無、高齢者の冬場の朝湯の制限、その他
 解毒療法に関する諸注意(概略)
意 識 アレルゲン(重金属、ダイオキシン、花粉、食物アレルゲン、その他)、老廃物、老化した細胞等の排出、血流改善による体の歪みの修正(体質改善)、強酸性高温泉により誘発される炎症を集中させることによる効率化、その他
季 節 年齢・体力・疾病により判断。高齢者・心肺機能の低下している者等は冬をさける。その他。
期 間 基本は、「三月三年百十日」、発症状態、体力によって1ヶ月から半年、近年は入湯者自身が決めていくことが多い。
回 数 本人の希望による。理想は2回から3回。
可・不可 入湯者の湯治期間、意志の強弱・精神状態、体力の強弱、意思疎通の有無、体力年齢、過去の手術歴などによる。
開始時間 湯ならしの必要性、湯ならし後に呼ばれる人、全身に反応が出る危険性のある人、その他
判   断 衣服:色、匂い、視診:湿疹の有無と種類、腫れ、内出血、感染症、その他
指導・指示 回数の増減、入湯時間の調整、温度帯の調整、入浴反応の範囲の調整、食事、休息、医師への診断、その他。
期間中の生活 お湯に体力がついていっているか、食事、睡眠、精神状態、環境適応、時間・経済状態の相談、その他。
かゆみの対処 食事の温度調整、、蒸し(宿も含む)、湯の持ち帰り、時期により夜間は一般浴、臨時の湯、その他
痛みの対処 炎症激化のものは時に休息・湯の一時中断、医師の診断、温度、回数の対処、その他。
あげの判断 湯治者への説明、納得の上での問診、視診(腫れ、むくみ、体臭、肌のつや、その他)
あげ方 食事(量の調整も含まれる)、温度・入浴回数、運動、衣服の増減、下着、その他。
あげ後 上がり湯(沢渡、六合村等)、相性の良い一般浴に移す、時間で二番湯・三番湯、あげ後の本人の意識の疎通。その他。





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