| 草津温泉ならではの時間湯 |
 日本には数多の名湯があり、湯治場が存在しますが、そこで培われた経験や効率的な湯治方法が正確に伝わり、発達していくことは難しいものです。草津温泉は、その豊富な湯量や見た目の華やかさが注目されがちですが、本当の凄さは別のところにあると思います。
江戸や明治といった古くから、全国から集まった湯治客が自らの体験と湯治の実績から、様々な入湯技術を生み出していったこと。その知識を湯長という自分達で選んだリーダーに蓄積して積み重ねていったことです。それが湯治に特化した、世界で唯一の強酸性高温浴システム、時間湯なのです。時間湯は医学や研究者を否定することもなく、その長所を積極的に受け入れて進化してきました。町民や行政は、他所からきた集団を否定することもなく、応援して育ててきてくれたのです。草津温泉の歴史そのものです。最も効率的な湯治を行う為の、こだわりの源泉や特殊な浴槽、建物だけでなく、そこに息づく人間達と知恵を含めての無形文化財だと、私は考えます。
最近、注目されている毒だしや計画的湯治などは、時間湯では百年も前から行われてきたことでした。活力と再生の基本は、免疫や細胞を眠らせたり抑制する必要がある時期もあるが、本当の回復のキーワードは温めることと細胞を使うことだと伝えられてきたのです。
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| 湯治の効用について |
 どの温泉にも共通して現れる効果として、簡単に言うと、温泉の科学物質の効能や、反復継続して規則正しく入湯することにより身体の歪み補正を行う非特異的変調効果があるそうです。現地での風土や身体に適した食事療法効果や、転地効果、「ここなら身体がよくなる。幸せになれる。」といった精神的な効果。信じる効果もあるでしょう。
最近、湯治客の多いアトピー性皮膚炎やステロイド皮膚症には、草津温泉中の水素、マンガン、ヨウ素等のイオンが働き、アルミニウムもよく作用するといわれているそうです。
しかし、本当に湯治の方に必要なのは、歴史でも分析表でもなく、最も自分に適した温泉と具体的な入浴方法でしょう。しかし、それを知ることが、なかなか難しいようです。
自称、温泉名人や湯治経験者、そしてお湯の関係者や湯治マニアなど、様々な意見や情報が交錯して、結局面倒になり、自分で受け入れ易い場所と方法が一番良いのだと、言い聞かせている人も多いのかも知れません。
沢山ある草津源泉のどれが自分にあっているのか? どうすれば、時間もお金も節約して早く会社や家族のところへ帰れるか? 時間湯は、そうした知識が集まる場所でもあると思います。
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| 温泉療養の注意点 |
どんな若くて体力のある人も、人間である以上、自分の限界を超えた負荷には耐えられません。どの分野でも一流と呼ばれる人ほど、自分を過信せず準備するための時間や労力を惜しみません。例えばランナーは栄養や休息を考えて、毎日練習して、それでも勝負の前には筋肉をほぐして身体を温めてから、勝負に挑みます。シミュレーションや呼吸法などを取り入れる選手も珍しくありません。
どんなに素晴らしい病院があって、自分の病に適した薬があっても、用法が分からなければ危険です。それを、どのように服用するか分からないで勘で飲む人はいないでしょう。食後? 食前? 何錠? 最高何週間まで飲んで良いのか? これを知らないで飲む人は無謀です。勉強にも仕事にもスポーツにも、最も効率的で身体を痛めない方法を教えてくれる教科書があり、先輩達が存在するのです。だから、湯治も勘や運任せにしないで欲しい、というのが私の願いです。湯治にも事故や後遺症があるということを知って損はないでしょう。
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| これから湯治を始める方へのメッセージ |
 温泉のプロになる必要はありません。
しかし、自分の大切な身体に関しては他人任せにしない。長く大切に隣人の幸福の為に使えるように、自分の身体のプロになって下さい。お医者さんも湯治場もその手伝いをしてくれるでしょう。でも、本当に身体をよくしてくれるのは自分自身の正しい信念と、無理せずに少しずつ引き出されていく生命力だと思います。
共同浴場も旅館の湯も、草津は最高です。しかし、目的が癒しや休養でなく、最短の湯治による社会復帰を目指すなら、その土地の湯治方法と適した湯を調べてください。温泉療法医者の先生でも、本当に長年、草津温泉を研究してきた方でも構いません。
病んだ人でなければ、気づかない他人の痛みや光、知恵があると思います。諦めず、先入観に囚われずに、素直な心を持ったときに、人生は好転します。
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| お湯の力を信じて |
湯治客の中でも、最も重症クラスだと先代湯長から言われた私でも、役に立つなら、体質改善のお手伝いをさせて頂きますから、勇気を出して声をかけてみてください。
年中、お湯と病気のことばかり考えている私が気難しそうに見えたなら、心優しい湯長の鈴木さんもいますし、温かい仲間達もいます。
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